「サピエンス全史」から学ぶ資本主義

『サピエンス全史』を書店で目にした方も多いのではないだろうか。

しかし、上下巻合わせて500ページを越える大作であるので、敬遠された方と多いのでは。

そんな方に本書から学べること紹介していく。

一度読んだ方も、理解を深めるためにもぜひ本記事を読んでほしい。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

 

 

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

 

 

 

わたしはこの社会の成り立ちが知りたくて本書を手に取った。

⓵どうして、いつから資本主義社会になったのか

②どうしてみんな会社に行って働くのか

③どうして貧富の差があるのか

④太古の人たちはどうやって、どんな価値観で生きていたのか

そんなことを知りたくて本書を手にしました。

 

この記事では、①の資本主義について本書から得た示唆について記す。

(資本主義に関する記述は、『サピエンス全史 下巻』にある)

⓵資本主義は500年前の科学革命以来、「未来の成長を信用する」という考え方が広まり、形成されていった。

「未来の成長を信用する」という考え方が生まれたきっかけは大航海時代

コロンブスが1492年アメリカ大陸を発見し、

金や銀を航海の資金を提供してくれたスペイン王室に

持ち帰ったことで、未来への投資は富をもたらすという考え方が広まった。

 

資本主義の文脈の中で印象的だったのは、

アダム・スミスが1776年に出版した『国富論』に関する記述。

資本主義は「資本」をたんなる「富」と区別する。

資本を構成するのは、生産に投資されるお金や財や資源だ。

一方、富は地中に埋まっているか、非生産的な活動に浪費される。

『サピエンス全史 下巻』p136

わたしは以前まで資本主義的な考え方に嫌悪感を抱いていた。

貧富の差を生む諸悪の根源であるのに、どうして世の中の会社はみな口を揃えて、

「売り上げアップ」、「成長、成長」と言うのか。その先に何があるのかと。

 

しかし文脈の中で、わたしは資本主義の恩恵を充分に受けていることに気付いた。

資本主義が生まれる前は、富は一部の人の欲望を満たすために使われていたからだ。

例えば、ベルサイユ宮殿。絶対王政時代のヨーロッパ、富を独占していた王族や貴族は、

その富を国民のために使わず、ベルサイユ宮殿のような自らの権力を示すために使っていた。

平民から得た税金は、貴族が夜な夜なパーティーをするために使われていたという。

フランス革命が起こったのも無理ないなあ、と思ってしまう。

しかし現代では、税金はわたしたちの生活基盤のために使われ、

企業はわたしたちから得た売上を、わたしたちの生活を豊かにするために使われる。

 

資本主義を全否定できないのだなと思った。

確かに資本主義には、奴隷貿易アヘン戦争などを引き起こした負の側面もある。

しかし、現代の一般庶民のわたしは、資本主義が生まれる前のフランス革命前夜で一般庶民をしているよりも、安心度合いは大きいのだろうなと想像される。

 

⓵の疑問に立ち返ると、どうして世界中の国が資本主義を受け入れているかは、

「貧富の差は生まれるが、全体に(貧しい人も富める人も)恩恵をもたらす考え方であるから」

というのがわたしの答えである。

 

実際のところスミスはこう述べているのに等しいー

強欲は善であり、個人がより裕福になることは当の本人だけではなく、

他の全員のためになる。利己主義はすなわち利他主義である、というわけだ。

『サピエンス全史 下巻』p135